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自分のデスクに向かって仕事をする華さんの膝の上に陣取った彼女……華さんの親友にして同居人(この間華さんに訊いたら、本当に家賃折半でルームシェアしているらしい)、暁夏子は、華さんにしなだれかかるとクスクスと笑った。
なぜか彼女の周囲にだけ、淫靡な空気が漂っているような気がする。
はっきり言って、オフィスという背景から二人の周囲だけくっきりと浮いている。
そもそもここは僕と華さんが所属する部のオフィスであって、彼女は人事部秘書課所属であるのだから、そもそも彼女が異端なのであって、部外者なのであって、浮いているのはある意味当然であるわけなのだが。
「……なっこ、私はまだ、仕事中です」
常の冷静沈着無表情の中にほんの少しだけ『やれやれ』といった感情を混ぜて、ようやく華さんが重い唇を開いた。
定時は過ぎているが、華さんは大抵人がはける時間帯までここで雑事をこなして時間を潰していている。
現に今の華さんは前髪をあげた仕事モードだ。
視線恐怖症の華さんは、周囲から人気が消えないと安心して帰ることができない。
そう、帰れない、のだが……
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