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「ひと狩してくる」
華さんはそのままオフィスの外へ行ってしまった。
置いてきぼりを喰らってしまった僕は目をしばたたかせることしかできない。
それは他の課のメンバーも一緒のようだった。
「は、華さん?」
ハッと我に返った僕は、華さんの後を追うべくドアへ向かう。
その腕を、いつの間にか僕の背後に回っていた暁が掴んだ。
「申し訳ないのだけれど、見物はここのドアからにしてくれる?」
「見物って……君は華さんに何をさせるつもりなんだっ!?」
「何って、狩り?」
なんだその不穏な言葉は。
可愛らしく小首を傾げてみせたって騙されないぞ、僕は。
「あまり近付くと、逆に華が危ないわ。
あなた、華を危ない目に遭わせたい訳じゃないでしょう?」
そう言われてしまうと、グッと言葉を飲み込むしかない。
そんな僕を見た暁が、クスッとわずかに笑ったような気がした。
「私だって、好きで華を危ない目に遭わせたい訳じゃないの。
でも……」
チンッと軽やかな音がして、エレベーターの扉がゆっくりと開く。
そこから降りてきたのは、見覚えのない年配の男性だった。
その男はキョロキョロと左右を見回すと、エレベーターに背を向けるようにして立った華さんを見つけて、ニタァと笑みを浮かべた。
同性の僕でも吐き気をもよおすような、下卑た笑みを。
「な・つ・こ・ちゅぁーん……
君の上司から聞いたよぉ……
ようやく私とイチャイチャする気になってくれたんだってねぇー……」
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