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その男の手が、背後から華さんに向かって伸びる。
目指す先を見れば、その手の意図は明白で。
「…っ、華さ……!!」
「 ─── っ!!」
僕は暁の腕を振り払って華さんの方へ駆け出す。
だが僕が男を殴り飛ばすよりも、華さんの無音の気合いが響く方がわずかに早かった。
「……へ?」
華さんが取った男の手を中心にして、男の体が縦に回転して宙を舞う。
思わず体を引くと、僕が今までいた場所を突っ切って男の体が壁に叩き付けられた。
白目を剥いて全身を痙攣させた男は、そのままズルズルと廊下に落ちて伸びてしまう。
「……え?」
思わず華さんと男に交互に視線を向けていると、華さんはフーッと深く息を吐いて瞳を閉じた。
「……お騒がせしました」
息を吐き切ってから瞼を開き、こちらへ歩み寄ってくる華さんは、すでに平常モードに戻っている。
どこからどう見ても、成人男性をブン投げるような力がその体にあるようには思えない。
「は……華さん?」
「華は、合気道の達人なのよ」
硬直したまま華さんを迎え入れる僕の陰から、暁がピョコリと顔を出す。
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