華に狼、暁守る華

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「なっこ、連行してくるから、しばらくここで待機」 「アイサー」 「課長、申し訳ありませんが、しばらくなっこに付いてあげていてくれませんか?」  暁が差し出すメガネを顔に納めた華さんは、伸びた男の後ろ襟に指を入れながら伏し目がちに僕を見上げた。  恐らく華さん側からは視線を合わせていないのだろうが、僕の方からはきちんとこちらの顔を見ていると分かる角度。  オフモード華さんの精一杯の誠意だ。 「課長なら、信頼できるから」 「華さんは、もう危なくない?  絶対に安全なんだね?」 「はい」 「分かった。行ってきなさい。  暁とオフィスで待っているから」  僕が答えると、華さんは一礼してから自分が投げ飛ばした男を片手で引きずってエレベーターの中へ消えていった。  急にシンと静かになった廊下に、僕と暁が取り残される。 「さて、待つ間に、お茶会でもする?」  僕の傍らに立った暁が、僕を見上げて挑発的に笑う。  その笑みに釣られて、訳が分からないまま、僕は自分のオフィスへ戻った。  .・°・. 。.・°・. 。.・°・. 。.・°・. 。.・°・. 「ほら、私、こんな外見でしょう?  昔、この外見のせいで、酷いことされそうになって」  僕と暁の前には、綺麗な緑色の水面を見せる緑茶の湯飲み。  秘書課で辣腕をふるう暁は、たしなみとしてお茶の入れ方も熟知しているらしい。  緑茶を美味いと感じたのは久々のことだった。
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