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毎朝、太陽の光で目が覚める。
太陽が沈んだら眠る。
だから、部屋の窓には、あえてカーテンをしていない。
ベットから起き上がり、窓を開けて、大きく背伸びをした。
見上げた空は、高く高く、深い青。
南から北まで伸びる、ほうきで掃いたような白い雲に向かって、深呼吸をした。
空から、地へと視線を落とす。
こんなに澄み切った青い空とは、対照的な光景。
地平線まで果てしなく続いていく、土、砂、岩。
植物や虫や動物、それらの命の息吹のない、絶望的な景色。
目を閉じて、深呼吸する。
数秒後、もう一度目を開けるが、やはり、その景色は変わらない。
夢ではない、現実だとわかっているけれど、いまだに受け入れることが出来ない。
一年前。
世界戦争で使われた化学兵器の影響で、周りの人間は次々と死んでいった。
動物も次々と命を落とし、植物は枯れた。
「おじいちゃん、苦しいよ…」
可愛がっていた近所の子供の顔が浮かぶ。
両親を先に亡くしたあの子を、妻とふたりで看病したのだけれど。
その甲斐なく死んでしまった。
それから妻も、後を追うように死んだ。
どうして、私のような老人だけがひとり、生き残っているのだ。
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