1 Prolog

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時刻は八時半。終業の時間だ。 俺と豪は速やかに片づけを行い、事務室から退散した。 俺はあれからずっと、あの子供が助かったかどうかが気がかりで仕方がない…。 「ちょっと医事課に寄って帰るよ。さっきのCPA、春藤さんがいろいろ手伝ってくれたから挨拶しに行く」 あんな朝早くからあんなに走らせてしまったし、お礼は言っておかないと。 「おう、わかった。んじゃまた明日の夜勤で。…朝から大変だったな、お疲れ」 「ん、お疲れっ」 別れの挨拶をし、豪が売店横の出口から出ていくのを確認してから、俺は速足で医事課へ向かった。 なんかつめたい飲み物でも買って持っていくことにしよう。 「お疲れ様です、春藤さん。これどうぞ」 デスクで事務作業を行う春藤さんに缶コーヒーを渡した。 「あ、みっちゃんお疲れー、もらっていいの?」 「はい、さっきは助けてもらってありがとうございました」 春藤さんはさっきの大騒ぎをまるで感じさせないくらい落ち着いた様子で俺からコーヒーを受け取った。 「いいのいいの、それにしてもみっちゃんすごかったよ?もともと仕事できる子だなーとは思ってたけど、あの場であんなに冷静に的確に動けるなんて思ってなかったから驚いちゃったね」 確かに、自分でも驚くほど冷静だった。あの場で冷静に行動できたのは、きっと普段の仕事で突然の珍事件に対応する能力が養われたからだろう…ただでさえ病院の夜間業務っていうのは変な人間を相手にしなくてはならない機会が多いからなあ。
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