第二章 閉鎖病棟の少女

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次から次へと流れてくる汗を煩わしく手でぬぐいながら、病院へ到着した。ここに来るまでには誰にも人に会わなかったが、ここなら…と、思ったのだが。 ……職員駐車場はガラガラで、ここに来たことは失敗だったとなんとなく察してしまった。ここにも誰にいないのか。 職員駐車場奧の階段を上がり、裏口の壁に設置されたセキュリティ装置に暗証番号を入力し、院内へと侵入。こういう電子機器はちゃんと動いているんだな…。 しかし… 「誰もいない……」 時間は六時を回ったところ。この時間なら医事課にはまだ職員が残って残業をしているはずだが、医事課には誰もいないし、一般外来にも、救急外来にも誰もいない。 病棟にも行ってみたが、看護師はおろか患者も誰もいない。 まるで…俺が一人だけ別の世界に放り出されたような…そんな状況である。 一体何がどうなっているんだ。 俺はだんだん冷静ではいられなくなってきた。
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