第二章 閉鎖病棟の少女

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自動ドアによって隔離された病棟、集中治療室。 重い自動ドアを潜り抜け、さらに奥へと進む。ただでさえ薄暗い室内が、奧へと進むにつれさらに暗く…空気も重くなってゆく。隔離された病棟とはこんなものだ。 取り壊された昔の精神科病棟もこんな感じだった。 突き当たりに、「集中治療室」と書かれた部屋があった。 ここは一般的な病棟とは異なり、24時間の監視が必要な、重症患者が収容される。ただの事務員である俺は当然中に入ることは許されず、入り口までしか来たことがない。 入り口前まで来たものの、俺はそこから先に進むことができない。これでは行き止まりと同じだ。 「外からは開かないんだよな、どうしよう」 入り口横にある、「面会の方はこちらにお話しください」と書かれたインターホンを押してみる。 ピーンポーン、と、無機質な呼び出し音が周囲に響く。なんとなく苦手な音だ。 ………しばらく待つが、なんの反応もない。 ここにも誰もいない、と考えていいだろう。 …となると、あのカルテはどこから誰が書いているんだ…? というか、何て書いてあるんだ? いや、そもそも電子カルテに医療目的のオーダーを入力をせずに、メモ帳感覚でああいう入力の仕方をすることはできないはず…。 色々と推測してみるが、いまいちしっくりとこない。 謎が謎を呼ぶこの状況…もう俺一人ではどうしようもない気がしてきた。
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