5人が本棚に入れています
本棚に追加
「破壊屋の仕業だったんですね。それは本当に申し訳ありません」
「あなたが謝るようなことじゃ……」
「こちらの懐中時計、私が責任を持って、復元します」
青年は、「復元屋」と呼ばれていた。どんな品物も、欠片から、本来あるべき姿に直してしまう。
「死んで」しまった品を彼は、「生き返らせる」生命を吹き込むように繊細に、丁寧に。
「お願いします」
依頼者の男性が立ち上がり、頭を下げた。切実な態度に青年は、「必ず」と断言し、力強く頷いた。
依頼者の男性が背を向ける。扉の上の鈴が鳴った。青年はその背を見送りながら、心中でもう一度頷いた。必ず復元させる、と誓った。
男性が去ってから数秒後、店の奥から一人の偉丈夫の男性が現れた。「破壊屋」と呼ばれている男だ。
その気配に青年は振り返り、顔をしかめた。
「直せ、ってさ」
「聞こえてた。直せばいいだろ」
「壊したの誰だよ」
「俺は依頼されただけだ」
ドサッ、とソファが跳ねる勢いで破壊屋は、復元屋の正面に腰を落とした。破片を手にする。
「一センチ弱。いい仕事をした」
「やりすぎなんだよ。話聞いてたなら知ってるだろ。それ形見なんだよ」
「俺に背景は関係ない。ただ、壊すだけだ」
「俺は大事にするけどな。ただ直すだけなら誰でもできるが、その思い、背景まで直さないと意味ないからな」
最初のコメントを投稿しよう!