DD!2.5

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 晃司は、怒らなかった。ただ、悲しげに微笑んでいた。 「……駅まで、結構あるな。やっぱ俺たちもタクシー拾おうぜ」  晃司が歩道の端に立ち、タクシーを探す。しばらくそうしていると、タクシーが一台通った。  素早く手を上げ、タクシーが止まる。そのタクシーに、晃司は大輔を、大輔だけが乗るよう促した。 「……お前んちの方が遠いだろ、先に乗れよ」  そう言って、晃司は大輔をタクシーに押し込んだ。  大輔は、晃司さんも、とは言えなかった。  忙しいだろうタクシーは、すぐにドアを閉め、走り出した。  タクシーの中は、冷房が強すぎる気がした。肌寒く感じたのは、きっと気のせいではない。 「……どちらですか?」  運転手が、ミラー越しに無愛想に聞いてくる。大輔は自宅の住所を伝えながら――泣き出した。 「お、お客さん?!」 「すい、ません。なんでもないんです。気分が悪いとこじゃ、ないんで……行ってください……」  それだけ言って、大輔は顔を手で覆った。運転手に気まずい思いをさせて申し訳なかったが、耐えきれなかった。  泣きたいのは、一人で置き去りにした晃司なのに――。  大輔は、選べない自分を嫌悪し、憎み――愛しい人を思って泣いた。  もう、わからなかった。自分の気持ちも――恋人の本当の心も。  夏の夜。大輔は、恋の迷宮に堕ちた。
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