DD!2.5

23/33
154人が本棚に入れています
本棚に追加
/33ページ
 そして戻ってきた繁華街で次の店を探している途中、桂奈がふいにぼやいた。 「それにしても……なんか、おかしいよねぇ」 「……はい?」  なんの話か、と隣の桂奈を窺うと、桂奈は刑事の顔になっていた。鋭い視線で前を睨んでいる。  大輔は少し怯んだ。 「おかしい、ていうのは?」 「バルでの茶番、だよ。面倒には関わりたくないけど、妙に気になっちゃって」  刑事の性かな、と桂奈は腹立たしそうに呟いた。  先ほどの厄介事をさっさと忘れて飲み直す予定だが、桂奈の刑事の勘がそうさせてくれないらしい。新米刑事の大輔にはピンと来なかったが、先輩刑事に付き合うことにした。 「なにか不審な点、ありましたか? あの鹿野って男が最悪、てことはわかりますけど……」 「あいつは単純な最低野郎って感じだけど……あの婚約者がねぇ。いきなり浮気相手に乗り込まれて動揺したんだろうけど、怪我までさせられたのに、帰っちゃったりする? そんなに動揺するくらいなのに、あんな危ない女の言うことスンナリ信じちゃうのも謎だし」 「……確かに、言われてみると変な気もしますけど……」  首を傾げると、桂奈が小さく息を吐いた。 「あの修羅場も、なぁんかウソ臭い気がしたんだけど……大輔くん、なんにも感じなかった?」  大輔は彼なりに真剣に考え、それから首を横に振った。桂奈の肩がカクリと落ちる。 「大輔くんてさぁ……もってる割に、勘が鈍いっていうか……トロいとこがあるよねぇ。そんなんで交番時代、職質上手くできたの?」  恐るべき女刑事の勘に、大輔は震えた。 「……仰る通りです。俺、職質苦手で……よく見当違いをしてしまって、パトロール中に先輩に叱られました」 「え~、じゃあ大輔くんの武勇伝てホントにほとんど、ただの運だったんだ!」 「は、はい……」  大輔は小さくなるしかなかった。 「羨ましいけど……大輔くんがイケメンじゃなかったら、イジメてたな、あたし」 「ちょっ、桂奈さん、怖いこと言わないでくださいよ!」 「警察がどんだけ陰湿な組織か、知らないわけじゃないでしょ?」  さらに恐ろしいことを言って、女刑事はニヤリと笑った。  ヒーッ! と本気で震え上がる大輔を、一転、桂奈はカラカラと明るく笑い飛ばした。 「ね、大輔くん。カラオケしながら飲まない?」  チェーン店のカラオケ店の前で、桂奈は足を止めた。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!