DD!2.5

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 穂積はまるでそこに大輔と晃司がいないかのように二人を無視し、桂奈を引きつれO南署の敷地を出た。O南署を出ると割と広い幹線道路で、タクシーはすぐに掴まった。二人はサッサとそれに乗り込んだ。  桂奈は何度か大輔と晃司を振り返ったが、穂積は一度も二人を――大輔を見なかった。  胸がチクリと痛んだ。  穂積が気を利かせてくれたのだとわかる。それなのに、落ち込む自分に大輔は嫌気が差した。 「……俺らはどうする?」  未練たらしく穂積が消えた方を見ていると、聞き慣れた低くて優しい声がした。  晃司を振り返る。晃司は目を伏せ、その表情が窺えなかった。 「俺らも、タクシー拾うか? それとも……」 「近くの駅まで、歩いても二十分ぐらいですよ。……歩きませんか?」  大輔は、桂奈の助言を実行することにした。  晃司とちゃんと話をする。  晃司はやっと顔を上げ、大輔を見た。  奥二重の目の奥に、戸惑いと優しさが見て取れ、大輔は切なさが増した。  二人は少し距離を置いて並んで歩き出し、O南署から五分ほど歩いた頃、晃司が重い口を開いた。 「なんか……悪かったな」  幹線道路は、夜でも通行量が少なくなくて、車の音で晃司の声がかき消されてしまいそうだった。  大輔は耳を澄まし、愛しい男の声に集中した。まだ、恋人との距離を縮める気分にはなれなかった。 「穂積とのこと……隠すつもりはなかったんだ。昔のことだし、忘れてたし……お前に話す必要性をまったく感じてなかったんだよ。でも……知らされたお前は、気分が悪いよな」  桂奈の言う通り、今回の一番の被害者は晃司なのかもしれない。晃司は悪くないのに、大人になれない大輔に責められている。 「お前を傷つけたと思うと……自分の軽率な行動に腹が立つよ」  晃司の言葉に嘘はない。優しい男だから、恋人が勝手な理由で傷ついても、それでも罪悪感を覚え――自分も傷つくのだろう。 「ごめんな、ロクでもない男で」  悲しげに笑い、晃司が大輔を見る。  大輔は足を止め、こみ上げる涙を我慢できなかった。 「大輔?」  驚いた晃司が大輔に一歩近づく。 「来ないでください!」  この一言が、どれだけ晃司を傷つけただろう。わかっているのに、大輔はそう言い放った。  まだ――晃司の体温を受け止める自信がない。
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