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「カールってば!!」
普段のカールとはまったく違う異様な空気から逃れたくて、ルイはとうとう弓を持った彼の腕を強引につかんだ。
瞬間、思いもよらぬ強さで振り払われ、きっとこちらを睨むカール。
あまりに乱暴な眼差し。しかしルイの姿を認めるとふっと夢から覚めたような様子でゆっくりと瞬きをして微笑んだ。
「ああ、ルイか……どうしたんだよ。ノックもしないで入ってくるなんてお前らしくないじゃないか」
ごめん、としどろもどろに詫びながら、再びカールの様子を伺う。いつもの彼のようだった。
「ハンナさんが、ご飯って……」
「え、もうそんな時間? まじかよ……どうりで腹が減るはずだな」
はは、と笑いながら楽器を片付け始めたカールの背中を、ルイは疑心とともに見つめていた。
なにかがおかしい。ここにいる友人は、本当にカール・ツェルニーなのだろうか。
そんなありもしない考えが浮かぶ。
―――それに、あの目……。
先ほどのカールの瞳。あれと同じ目を、ルイは見たことがある。それも、つい最近。
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