彼の隣、彼の声

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だけど拒否の言葉なんて聞きたくない私は、そのまま走ってその場を去った。 去ったというより、逃げたという方が言葉の表現は当てはまるかもしれない。 「……はぁ、はぁ……」 彼から私の姿が見えなくなる辺りまで、夢中で走った。 立ち止まり、速くなった鼓動を抑えるためにゆっくりと深呼吸を繰り返す。 「……喋っちゃった……」 言葉を交わしてしまった。 名前を知ってしまった。 彼の瞳に、私が映った。 恋なんてしない。 今まで何度もそう口にしてきた私だけど。 もう、その言葉は口にしない。 だって、私は、恋をしているから。 もう認めるしかないんだと、バスを降りたあの瞬間から悟っていた。 そして彼と言葉を交わしながら、否定する事を諦めた。 『たった一つの恋が、人生を変える』 人生初の恋が動き出した日。 この日私の頬は一日中緩みっぱなしだったと思う。
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