彼の隣、彼の声

4/23
469人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
ウソ、どうしよう。 席空いたのに、誰も座らないんだけど。 …ていうか、一番この席に近いのって、私? 車内は確実に混み合っている。 そんな中、たった一つだけ空席になった場所。 ……彼の、隣。 チラリと周りを見渡すと、周りの人達はどうして私が座らないのか不思議そうに見ている気がして。 いや、本当は私なんか誰も見ていないんだろうけど……。 「………失礼、シマス」 ヤバイ。 緊張のあまり、声に出してしまった。 隣に座るだけでこんな事言う人、どう見たって怪しさMAX。 でも彼には私の声は聞こえていないのか、私の声には全くと言っていい程反応を示さず、さっきからずっとスマホの画面に彼の視線は釘付けだった。 緊張しているのは、当然私だけ。 何て滑稽なんだろう。 何勝手にドキドキしてるんだろう。 でも、このドキドキを止める術なんて私は知らなかった。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!