その瞳の、視線の先に

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だって敬語のままだと、いつまで経っても私と棗くんの間に壁がある気がしてしまうから。 本当なら、年上の人には敬語を使うべきなんだろうけど…棗くんも特に怒ったりはしないから、そこまで嫌な気はしていないんだと勝手に解釈。 「そっちは…朝強そうだな」 「別に強くはないけど…うん、でも最近は朝強いかも。夜は早く寝るよ。睡眠不足は体に良くないから」 棗くんに出会ってからは、絶対寝坊しないように夜は早く寝る体質に切り替えた。 その分朝は早起き出来るし、本当に体の調子も前より良くなった気がする。 「まだ若いのに、健康の事気にしてんの?」 「え?」 「睡眠不足は体に悪いとか言うから」 「あー……うん、ていうかほら、美容に良くないから」 私はアハハ…と下手くそに笑いながら誤魔化した。 この2週間で、棗くんとは結構話せるようになったと思う。 棗くんも、私が喋りたいオーラを放っているからか、あの席には座らなくなった。 私はバスに乗り込んだらまず棗くんがどこに立っているかを探す。 …だいたい、一瞬で見つける事が出来るけど。 …私の特技にしようかな、なんて。
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