その瞳の、視線の先に

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棗くんを見つけたら、即座にその隣に空いているスペースを無理やり作って滑り込む。 で、おはようって、挨拶して。 私の止まらない質問攻めに、棗くんが一つ一つ答えてくれる。 そんな、幸せな平日の朝。 だけど私は狡いから。 棗くんの情報は何でも知りたいくせに、自分の事はほとんど話さないんだ。 特に病気の事は、絶対に話さないって決めている。 知られたくない。 棗くんにだけは絶対に。 健康で明るくて元気で、どこにでもいる普通の女子高生だと思われていたい。 病気の事を知られたらきっと、棗くんの目は同情の目に変わる。 哀れむような目で私を見る棗くんなんて…死んでも見たくない。 だから私は、いつでも元気なフリをする。 明るく振る舞って、笑顔を作る。 「美容って…高校生ならそんなの気にしなくていいんじゃないの?」 「そんな事ないよ。若いうちから肌とかお手入れしておかないと、すぐシミになっちゃうんだから」 「ふーん。でもあんた、肌白いよな」 そう言われて、一瞬ドキッとしてしまった。 病気が原因でもともと肌が青白い私にとって、「肌が白い」と言われる事は決して褒め言葉ではない。
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