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「……はぁ…はぁ…」
明かりがほんの少しだけ灯る公園の中を通るのは、少し怖い。
……でも、その先には棗くんがいるから、大丈夫。
「……棗くん」
公園のベンチの前。
小走りでその目の前まで行き、恐る恐る近付くと、やっぱりその姿は棗くんに間違いなかった。
いつもはキチッと締めているネクタイが、少しだらしなく緩められている。
眠っている棗くんの手には、何故か缶ビールの空き缶が1つ。
ここで飲んでいて酔っ払って眠ってしまったのか、それともどこか別の所で飲んで酔っ払い、このベンチに辿り着いたのか。
どっちなのかはわからないけれど、棗くんは目を閉じたまま起きる気配を見せなかった。
「………」
とりあえず私は、棗くんの手が握りしめていたビールの空き缶を公園のゴミ箱に捨てて。
ベンチのすぐ近くにある自販機で、ミネラルウォーターを購入した。
そして、冷えたペットボトルのミネラルウォーターを棗くんの頬にくっつけると、眠っていた棗くんはやっと目を覚ました。
「……冷てっ…」
「おはよ、棗くん」
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