初めての、好き

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目を覚ました棗くんは、数秒間ぼんやりと私の顔を見つめた後、呟いた。 「……何であんたがここに?」 「……運命、なのかも」 冬汰が指差した方向に、棗くんがいるなんて。 バスの中以外でも、こんな風に会えるなんて。 確率にしたら、どれくらいの出来事なんだろう。 これはもう、運命だと言ってもいい気がする。 「…なんてね。冗談だよ」 「……運命、か」 棗くんは一言呟き、遠い目をして空を見上げた。 「……棗くん、ここでいつもお酒飲んだりしてるの?」 「……いや、今日は居酒屋で会社の飲み会だったんだけど…ちょっと、飲み足りなくて」 「棗くんって酒豪なんだね。うちのパパと同じだ」 そう言うと棗くんは、ハ…と声に出して笑ってみせた。 「俺は酒豪じゃないよ。むしろ、酒弱いし」 「そうなの?…じゃあ、無理して飲んでたの?」 そう聞くと棗くんは、一瞬チラリと冷たい視線を私に送った。
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