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「……棗くんは、高3のとき進路で悩んだりした?」
「進路で?あー…うん。悩んだよ相当。まぁでも、自分の進路について悩まないヤツなんていないんじゃないの?」
「………」
そうなのかな。
だって周りの友達は、もうとっくに自分の受験先を決めている。
そしてそこに合格するために、毎日毎日努力を積み重ねている。
……いまだに進路について悩んでいるのなんて、正直自分しかいないんじゃないかって思ってた。
「……この間ね、進路希望の調査票に何も書けなかったんだ。私だけ、白紙。……私だけ、何も決まってないの」
それは話すつもりのなかった、突然の愚痴だった。
だけど棗くんは、こんな私の拙い話に真剣に耳を傾けてくれた。
「子供の頃から、憧れてる職業はあるの。……でも、自信がないんだ」
「何の職業?」
「……看護師」
誰にも言った事のない、密かな私の夢。
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