初めての、好き

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看護師は、子供の頃から私にとっては身近な存在。 病院は嫌いだけど、入院中、看護師さんの仕事を観察するのが私は好きだった。 だけど、病気を抱えている私があんな重労働な仕事出来るのかと言われたら自信はない。 それに両親は絶対に反対するに決まってる。 蓮先生だって、きっと反対する。 病弱な私にそんな責任のある仕事が務まるわけないって、誰もがわかっている事。 だから私は、今までこの夢を誰にも明かさずに今日まで過ごしてきたんだ。 「それなら、悩む事ないじゃん」 「え?」 「看護師になりたいんだろ?じゃあ、その夢を叶えるために、今やれる事を精一杯やればいいんじゃない?」 「……でも…」 「たとえそれが小さな一歩だろうと、踏み出す事で人生は変わると俺は思ってる。それに、必死に掴み取った夢は、失敗や挫折を経験したとしても必ず自分の財産になるよ」 「………」 棗くんのその言葉で、肩の力が一気に抜けたような気がした。 『失敗や挫折を経験したとしても、自分の財産になる』 まだ何も始まっていないのに、失敗する事を恐れていた自分。 小さな一歩を踏み出す事を、躊躇ってきた自分。
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