初めての、好き

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本当はあのとき、棗くんのスマホに届いたメールには、何か微笑ましい写真が添付されていたとか。 で、バスの中にいる事も忘れてついつい笑ってしまったとか。 思わず頬が緩んでしまうような写真といえば…。 「…ねぇ、棗くんって、犬とか猫とか…ペット飼ってる?」 「いや、何も飼ってないけど」 「……そっかぁ」 動物系じゃないんだとしたら、あとは…。 「ねぇ、棗くんって姪っ子とか甥っ子とかいる?」 「いや、いない。まだ姉ちゃん独身だし」 「……そっか」 姪っ子、甥っ子関係でもないんだとしたら、あとは何だろう? 「何?さっきから」 「え?あ…ううん、何でもない」 もしかしたら、好きな人なんていないのかもしれない。 私の勘違いなのかもしれない。 ていうか、勘違いであってほしい。 内心モヤモヤしながらも、棗くんから友人の話を聞く事はあっても、女性関係の話を聞く事は一切なかった。 休日は以前聞いたときと変わらず、寝て過ごすか家で好きなミュージシャンの音楽を聞くか。 だから私は、あれは自分の勘違いだったんだと思う事にしたんだ。
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