切なくて、もどかしい、恋心

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「……この間の男というのは……」 「金曜日の夜。お前が公園で会ってた、あの酔っ払いの男」 ……まさか、冬汰に見られていたなんて思わなかった。 「……冬汰、あのまま帰ったんじゃなかったの…?」 「お前のあんなわかりやすい嘘で、俺が騙されるわけないだろ」 「………」 とっさに口から出た、ヨーグルトの嘘。 そうだ私、ママだけじゃなくて冬汰にもあのとき嘘をついていたんだ。 …ダメだ、本当に。 …嘘ばかりついてると、いつどこでどんな嘘をついたのか把握出来なくなってしまう。 そしてどこかで必ず辻褄が合わなくなって、綻びが出てくる。 「……ごめん、嘘ついた」 「知ってる。だから聞いてんだよ。あの男、誰なの?」 棗くんの事、どう説明すればいいのかなんて。 考えたって結局ひとつしか思い浮かばなかった。 「……私の、好きな人」 棗くんを一言で説明するなら、それしかない。 私が初めて恋をした人。 好きで好きで、仕方ない人。
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