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「……ただいまー…」
意を決して家の玄関の扉を開けると、リビングの奥からママが小走りで駆け寄ってきた。
「純…お帰りなさい。もう…心配したじゃない急に電話切るから」
「ごめんなさい。スマホの充電、なくなっちゃって」
「どこにいたの?冬汰君と一緒じゃなかったの?」
当然聞かれると予想していた質問に、私は用意していた嘘を並べる。
「…うん、私ちょっとカラオケに忘れ物しちゃって。冬汰に付き合ってもらうのも悪いから、先に帰ってもらったの」
「そうだったの…」
「もう…ママ、心配し過ぎだよ。私最近体調良いし、そんなに心配する必要ないって。あれ、パパは?」
「パパなら今日はまだ会社の飲み会で帰ってきてないわよ」
…良かった。
…誰よりも過保護なパパがいたら、多分もっと大袈裟な事になっていた。
「パパが帰ってくる前に、お風呂入って寝ちゃいなさい。帰り遅くなった事は、パパには黙っててあげるから」
「…うん。ありがと、ママ」
私は部屋から着替えとタオルを持って、浴室へ向かった。
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