切なくて、もどかしい、恋心

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あのとき見ていた棗くんの夢には、『綾乃』が出てきたんだろうか。 「……おい、俺そんなに変な事言ってたの?」 「……さぁ。ナイショ」 「ナイショって…すげー気になるんだけど」 「……どんな夢見てたの?」 そう聞くと、棗くんは一瞬切ない表情を浮かべて。 「……忘れたよ」 ……と、微かに笑った。 「とにかくごめん、こんな時間まで。家、送るよ。この辺?」 「え…あ…大丈夫!家、すぐそこだから」 本当は、もう少し一緒にいたいけど。 家まで送ってもらうわけにはいかない。 過保護なパパに棗くんの存在を知られたら、それこそ一大事だ。 「いや、でももうかなり遅いし…」 「それより、棗くんの家は?この辺なの?」 そういえば、棗くんがどこのバス停からいつも乗ってきているのか私は知らないけど…もしこの辺に住んでいるのだとしたら、私の家とはかなりご近所だ。
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