彼にとっての、パーフェクト

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「お帰りなさい純。すぐ帰るって言ったのに、ずいぶん遅かったわね」 「……ただいま」 あのまま棗くんとは、また私のどうでもいいような話を延々と繰り返して、しばらくしてから帰宅した。 どうしてもまだ一緒にいたくて。 あと少し、あと少しだけって、何度も何度も思いながら話をしていたら、相当時間が過ぎてしまっていた。 「パパもまだ帰ってないから、ゆっくり話聞かせてもらうわよ」 「……はい」 ママはいつも怒っても感情を表には出さない。 穏やかな口調で、笑みを浮かべながら淡々と怒りを滲ませてくるタイプ。 ガツンと正面から叱ってくるパパよりも、実はママの方が怒らせると怖かったりする。 「純…それ、何持ってるの?」 ママが棗くんがくれたお土産に気付いたから、私は紙袋からお菓子の箱を取り出した。 「北海道のお土産だって。ほら、ここのお店、この間テレビに出てたよね?」 「あ、本当だ。ここのお菓子、一度食べてみたかったのよね」 甘いもの好きなママにとって、このお菓子のチョイスはまさにパーフェクトだった。
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