彼にとっての、パーフェクト

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「え…えっと……行きたいとこ、どこだろ……」 そもそもドライブって、どこに行くものなんだろう。 ドライブの経験がほとんどないから、適切な場所が全く思い浮かばない。 思い浮かぶ場所といえば、プールか映画館かショッピングモール。 ……範囲が狭すぎる。 「特にないなら、多分関のプランになっちゃうと思うけど」 「あ…うん!それで大丈夫だよ。私、どこでも楽しめるから」 棗くんと一緒なら、どこだって……。 「あ…でも…あまり遠くない所の方がいいかな」 「車酔いするタイプ?」 「あ……うん。実はそうなんだ」 本当は、車酔いが遠い所を避ける理由じゃない。 もし体調が悪くなったとき、すぐに家に帰れるように。 だから私は、ママとパパと出掛けるとき以外での遠出は今までずっと避けてきた。 親が傍にいてくれると安心するけど、私の病気の事を詳しく理解してくれている人が周りにいないと、やっぱり不安感は増してしまう。 ……本当は、どんな遠い所でも行きたいけど。 「わかった。関に伝えておく」 「よろしくお願いします」 ……こうして私はそれから毎日、日曜日までの日をカウントしながら過ごして。 やっと、待ちに待った日曜日を迎えた。
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