心の奥に、触れた瞬間

19/31
前へ
/31ページ
次へ
「…関係あるよ」 「関係ないだろ」 「あるよ!だって私、棗くんの事好きだもん!」 「………」 私達以外誰もいない空間で、私の声だけがやけに響いた。 ……勢いで、言ってしまった。 最悪。 好きだなんて、今ここで言うつもりなかったのに。 自分の恋で相当苦しんでいる棗くんに告白なんかしたら、余計に彼の心の負担が増えてしまう。 だから、この想いだけは口にしないって決めていたのに。 「…あ…あの!今のはウソ……なんかじゃ……ない……です」 だけど、ウソだとも言えなかった。 真剣なこの想いをウソだなんて、言いたくなかった。 「……知ってたよ。あんたの気持ち」 「……え…」 恥ずかしさで俯いてしまった顔をパッと上げると、棗くんはいつになく真剣な表情で私を真っ直ぐ見つめていた。 「…あんた、わかりやすいから」 「……ウソ……」
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

392人が本棚に入れています
本棚に追加