心の奥に、触れた瞬間

2/31
392人が本棚に入れています
本棚に追加
/31ページ
7月初旬の日曜日、午前9時50分。 待ち合わせ場所の駅前で、棗くん達が乗った車が到着するのを待つ。 待ち合わせの時間までは、あと10分。 ……緊張はしているけど、それよりも今日が楽しみで仕方なかった。 本当は家の前まで迎えに行くって棗くんは言ってくれたけれど、パパにバレたら何を言われるかわからないし妨害されかねないから、待ち合わせ場所は駅前に変更してもらった。 「あの、ちょっとすみません」 「…はい?」 車が到着するのをドキドキしながら待っていると、突然見知らぬ男性から声をかけられた。 見た感じ、多分私よりも少し年上くらいの好青年っぽい男性。 「今、ヒマですか?」 「……え」 「良かったら、これから遊びに行かない?」 「………」 何? 何なの?この人。 もしかしたら、これが俗に言うナンパってやつ…? 「え、いや、あの、私待ち合わせなんで…」 「あ…そうなんだ。じゃあさ、電話番号だけでも教えてくれないかな。僕、本当に全然怪しい者じゃないから!」
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!