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何もなくてこんなに頬が赤く腫れるわけがない。
それに、彼女のこの取り乱した様子。
関が彼女に対して手をあげるなんて…そんな事するはずがないと思いながらも、俺は口を開いた。
「……それ、関にやられたの?」
そう聞くと、彼女はビクッと小さく体を震わせただけで言葉を発さなかった。
だけど、違うなら違うと否定するはずだ。
否定しない時点で、それは肯定しているようなものだった。
「アイツ何やって……」
「大地には何も言わないで!…多分…ちょっと疲れてるだけだから。それに今回のケンカは、私に非があったの」
「……まさか…殴られたの、今回が初めてじゃないとか?」
「………」
そのうちに彼女の大きな瞳には涙が溢れていって。
そして彼女はポロポロと涙を流しながら、俺に体を寄せた。
俺にしがみつく彼女の華奢な手は震えていて。
俺はそんな彼女に手をあげた関が許せなかった。
「梶真くん……助けて……」
泣きながら、言葉にならない声で必死に呟いた彼女の声が胸に響いた。
……気付いたときには、俺はこの手で彼女を強く抱きしめていた。
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