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ずっとずっと、密かに想い続けていた彼女に触れた瞬間、もう後戻りは出来ないと悟った。
理性なんか、あのときの俺の中からは消えていた。
彼女の柔らかい髪に触れ、頬に触れ、次第に互いに見つめ合い、唇が重なる。
関を裏切る行為だという事は、当然わかっていた。
わかっていたけれど、止められなかった。
「……好きだ」
弱っている彼女を抱きながら、自分勝手な愛を囁く。
卑怯で、狡くて、あざとい自分。
「……名前で、呼んで」
「……綾乃……」
何もかも失ったって構わない。
綾乃さえいてくれれば。
彼女と過ごす時間さえあれば。
綾乃にとっての一番が関だとしても、綾乃の心の片隅に自分が居続ける事が出来るのなら、それだけで幸せだと思えた。
それが俺の幸せなんだと、そのときは本気で思っていた。
二番目でいい、だなんて浅ましい言葉。
ほとんどの人が到底共感出来ないようなその言葉に、自分だけは理解を示していた。
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