純粋無垢な、その存在に

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……仕方ない。 もう今日は食事は諦めて、帰って寝よう。 普通ならこんな致命的なミスをしたら、自分に対して苛立ちが収まらないところだけど。 この日は不思議と苛立ちは感じなかった。 それどころか、空腹を満たす物なんか食べていないのに、何故か満たされた気になっている自分がいた。 「………」 家までの道を歩きながら思うのは、綾乃の事ではなく、実家の犬の事でもなく。 ついさっき別れたばかりの天然女子高生の事。 いつも朝バスの中で会うときは、必ずと言っていいほど化粧を施している。 だけど今日の彼女は、帰宅して既に化粧を落としていたからか、全く飾り気のない素の顔だった。 正直俺は、女性の化粧に対して特に感じる事は何もない。 似合っていれば多少派手でもいいと思うし、化粧をしない主義の女性はそれならそれでいいと思う。 でも、そんな俺でも今日一つだけ感じた事。 やっぱり若い子は、化粧なんかしなくても十分可愛いんだな…なんて思ったりした。
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