純粋無垢な、その存在に

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別に土産なんて、今すぐ渡す必要なんかない。 なのに、俺は何故……。 『3分で用意して出ます!』 ……あの子なら、本当に3分で用意してあの公園へ向かいそうだな。 とりあえずスーツを脱いで私服に着替え、彼女に渡す土産を入れた袋だけを手に取り急いで家を出た。 あの公園までは、歩いて10分くらいの距離。 車は一応就職してすぐにローンで購入したものがある。 だけど、わざわざ近所の公園に車で駆けつけるのも微妙だ。 「………」 彼女よりも先に着くために、途中走りながらあの公園まで向かった。 まだ20時とはいえ、辺りは暗い。 特にこの辺は外灯も決して多くはない。 公園で待たせている間にもしも彼女に何かあったら大変だ。 そう思いながら、自分なりに急いで向かったつもりだったんだけど。 公園の入口に差し掛かって中を覗くと、あの奥のベンチの方には確かに人影が見えた。 そして、久し振りに走ったせいで上がった息を整えながらベンチへ近付くと、いつもの笑顔で彼女は俺に手を振りながら座っていた。
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