純粋無垢な、その存在に

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「…うわ、早」 「こ…こんばんは!」 「……こんばんは」 俺が近付くと、彼女は立ち上がり大袈裟にジタバタ両手を振っていた。 ……これでもし尻尾があったら、確実にうちのブルーにしか見えない。 とりあえずベンチに座るよう促し、俺は持ってきた土産の袋を手渡した。 本当に私がもらってもいいのかと恐縮する彼女だけど、その顔は嬉しそうに綻んでいた。 「いらないならいいけど」 「いるってば!」 そして彼女は袋の中を覗き込むと、突然テンションが上がった。 「…あ!このお店知ってる!札幌で有名なケーキ屋さんだよね?この間この店の社長がテレビに出てた。棗くん、お土産のセンス最高だね!」 「へぇ…やっぱ有名なんだ。正直俺はそういうの詳しくないからわかんないんだけど」 そんなに有名な店だったのか。 確かに立ち寄ったときは、平日なのにも関わらず混んでいるとは思ったけど。 新に聞いておいて良かった。 俺が調べていたら、あの店には到底たどり着かなかっただろう。 お土産のセンスが最高…だなんてそんな褒め言葉も、絶対にもらえなかった自信がある。 まぁ、この土産をあの店に買いに行ったせいで先輩達に冷やかされる事になったわけだけど…。
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