純粋無垢な、その存在に

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一つだけ今食べてもいいかと聞いてきた彼女は、目をキラキラさせながら袋を開けて中に入っていた焼き菓子を口に含んだ。 「美味しい!何これ美味しいよ!棗くんも食べてみて!」 美味しいを連発しまくる彼女に急かされ、俺も一口食べてみた。 まぁ、確かに有名なだけあって濃厚で美味しいとは思う。 …ここまで騒ぐ程じゃないけど。 「あんたってさ、いつも元気だよな」 「え?」 「……何か、羨ましい。いっつも笑ってて、楽しそうで」 この子と話していると、癒されると同時に自分の汚さや狡さが際立って見えてくる。 自分とは、全く違った人種。 高校生だって、多少の狡さや人間的な汚さは持ち合わせているはずなのに。 彼女からは、一切そういうものは感じなくて。 こんなにも感情の表現が豊かで、素直で、純粋な笑顔を見せてくれる存在に出会った事なんてない。 周りの大人や友人から愛されて育ってきた事が、彼女の笑顔を見ただけですぐにわかる。 「悩みとか、なさそう」 「……悩みくらいあるもん」 「あぁ…そっか、進路の事で悩んでたよな」 俺がどうしようもなく酔いたかったあの日。 彼女は進路の悩みを俺にだけ打ち明けてくれた。 酔っていたくせに、あのとき彼女が見せた真剣な表情は、意外と今でも覚えていた。
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