純粋無垢な、その存在に

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「……棗くん?どうしたの?ぼーっとして」 「え…あ、いや、何でもない」 「このお土産、ママと一緒に食べてもいい?うちのママ、甘いもの大好きだから絶対喜ぶと思う!」 「いいよ。あんたのママが気に入るかどうかは知らないけど」 「絶対気に入るよ!だって棗くんが選んで買ってきてくれたものだもん」 「………」 だから、そういう発言が男を勘違いさせるって……気付いてないのかこの小悪魔は。 「あ…やば。ごめんね、棗くん。私そろそろ帰らないと」 「え…」 突然立ち上がった彼女の手を、咄嗟に握ろうと手を伸ばしてしまった自分。 だけど寸前のところで思いとどまった。   宙に浮いた行き場のない手を素早く戻す。 ……何してんだ、俺。 「実は向こうの駐輪場に自転車止めてるの」 「自転車で来たんだ。だから早かったのか、ここ着くの」 「うん…棗くんを待たせるの嫌だったから、何としても早く着きたくて」 エヘヘ…と照れ笑いを浮かべながら、俺が渡した土産の袋を両手で大事そうに抱えて駐輪場へと歩く彼女。 ……この天然発言は、もう受け流すしかない。
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