純粋無垢な、その存在に

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わざわざお礼なんかいらないのに。 しかもバスを降りてまで必死に渡そうとしてきたお礼が、アメ玉ひとつって。 俺は彼女の天然過ぎる行動に、笑いを堪えられず吹き出してしまった。 「あんた、バカだろ」 「……うん、多分、バカだと思う」 バカだって言われてるのに、何故か気の抜けた顔でふわっと彼女は笑った。 「………」 ……ヤバイ。 ……俺いま、この笑顔に癒されてる。 「…それよりあんた、今日テストだろ。学校間に合うのかよ」 「あっ…!」 無理やり彼女の視線を俺から外させ、その間に俺は冷静さを取り戻していく。 「多分、次に来るバスに乗ればギリギリ間に合うと思うから大丈夫。……棗くん、もう会社行かないと」 当然俺も会社を遅刻するわけにはいかない。 特に今日は朝から仕事が山積み状態。 けど、俺にガムのお礼を渡すためにバスを降りてくれた彼女を、このまま一人残して自分だけこの場から立ち去る気にもなれなかった。 「…次のバス来るまで…」 一緒に待つよ。 そう言おうとした瞬間。 「あれ、梶真?」 ……驚くほどタイミング悪く、そこで関と遭遇してしまった。  
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