335人が本棚に入れています
本棚に追加
「いや、別に少しぐらいなら大丈夫だけど…」
「ダメだよ…本当、邪魔しちゃってごめんなさい!切るね!」
「えっ…」
「お…おやすみなさい!」
そしてそのまま、電話はツー…と虚しい音だけを残してあっさりと切れてしまった。
別にそんな気使って急いで電話切らなくてもよかったのに。
「………」
一瞬かけ直そうと思って、着信履歴に残る彼女の電話番号を押そうとした。
でも、指先が番号に触れる寸前で思いとどまる。
『一度ぐらい、電話かけてやれよ』
茶化すように言った関の言葉を思い出した。
『あの子、お前の事めちゃくちゃ好きじゃん』
今俺が電話をかけたら、彼女はきっともの凄く喜んでくれる。
だけど、気持ちもないくせにそんな風に喜ばせてどうするんだろう。
期待させたって意味がないし、なにより彼女を傷つける結果になってしまうなら。
何もしない事が、一番の得策だ。
結局俺が彼女に電話をかけ直す事は、なかった。
最初のコメントを投稿しよう!