君の好きが、胸の奥に響いたとき-2

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だけど彼女とは違い素直さの欠片もない自分は、『可愛い』だなんて言葉、たとえ思っていたとしても口に出来るはずがなく。 「……髪、ハネてる」 「え、ウソ、どこ?」 「この辺」 と言って、彼女の柔らかい髪をぐしゃぐしゃと掻き乱した。 「ちょっ…もー…やめてよせっかく時間かけてセットしてきたのにー……」 困っている彼女を横から見つめながら、服装だけではなくその髪でさえ、いつもより念入りにセットされている事に気が付いた。 いや、よく見たら、それだけじゃない。 女の化粧なんて全く詳しくない俺だけど、それでも彼女の化粧がいつもと少し違う事はわかってしまった。 俺達と出掛けるから、少しでも大人っぽく見られたくて頑張って来たのか。 口には出さないけれど、もうその姿を見ただけで彼女の一生懸命さが伝わってきてしまって。 そしてそんなところが、可愛いと…… 「おしっ!じゃあ純ちゃんも合流した事だし出発するか!まずは、綾乃の行きたい美術展に向かうけどいいかな?純ちゃん」 「あ…はい!楽しみです!」 そこで俺の思考は止まり我に返った。
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