彼女が僕に、伸ばしてくれた手

2/23
前へ
/23ページ
次へ
純が俺たちの前から立ち去った後、関に自宅マンションまで送ってもらった。  夕飯どこかで一緒に食べないかという誘いは、丁重に断って。 そして帰宅して早々、俺はリビングのソファーに倒れ込んだ。 「……あれで良かったんだよな……」 頭に思い浮かぶのは、好きだと俺に繰り返し伝えてくれたときの彼女の顔。 想いが詰まった、あの言葉。 きっと、俺の気持ちは伝わったはずだ。 俺の事なんか、早く忘れて。 俺はこの先もずっと、あの子を好きになる事はない。 この先あの笑顔が俺に向けられなくなるとしても。 この先彼女の『棗くん』が聞けなくなるとしても。 拒絶するしかなかった。 彼女の気持ちを受け入れる事は出来なかった。 最初から、俺の中で一つしかなかった選択肢。 なのに、どうして。 どうしてこんなにも、胸の内のざわつきが収まらないんだろう。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

354人が本棚に入れています
本棚に追加