355人が本棚に入れています
本棚に追加
翌日、俺は迷った末にいつもの時間のバスに乗る事にした。
本当は時間をずらそうかとも考えた。
彼女はもう俺の顔なんか見たくないかもしれない。
…ていうか、普通はそうだ。
振られた相手と毎朝顔を合わせるなんて、そんなの苦痛の時間でしかないに決まっている。
俺が時間をずらさなくても、きっと彼女の方が時間をずらしていつもの時間のバスには乗ってこないだろう。
……そう、思っていた。
「棗くん…おはよう!」
「………」
一瞬、夢を見ているのかと思った。
彼女の態度が、あまりにも以前と変わらないものだったから。
そして、乗ってくるとは思っていなかったバスに彼女が乗ってきたから。
「……おはよう」
昨日の事なんて何もなかったかのように、彼女は俺に笑ってみせた。
「あの、昨日はごめんなさい!」
「え……」
「急用で先に帰っちゃったりして…関さんと綾乃さんにも、申し訳ない事しちゃったなと思ってて」
急用……だったんだろうか本当に。
最初のコメントを投稿しよう!