355人が本棚に入れています
本棚に追加
昨日の様子は、とても急用で立ち去ったようには見えなかった。
急用というより、むしろ……
「本当に本当に、ごめんなさい」
「……誰も怒ってなんかないよ。だから、そんな謝らなくていい」
昨日彼女がうずくまっている様子を見た事は、口にしなかった。
いつだって素直な彼女が口にした『急用』
何故あのタイミングで帰ったのかなんて、今更しつこく追及するつもりは当然ない。
あの幼なじみの男と親友の女子がどうしてあの場に現れたのか。
彼女に何が起きたのか。
全く気にならないわけではなかったけれど、敢えて聞くような事はせずに何も知らないフリをする事にした。
この子が隠すほどだ。
よっぽどの事なんだろう。
「ありがとう…本当は関さんと綾乃さんにも直接会って謝りたいけど…」
「俺が代わりに謝っておいたから、大丈夫だよ」
そう言うと、彼女はほっとしたように胸をなで下ろした。
最初のコメントを投稿しよう！