360人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
プールで遊び疲れた日の夜。
私はベッドに正座して、スマホを握りしめていた。
「……はぁー……」
何度も繰り返す深呼吸。
棗くんに電話をかける前は、だいたいいつもこんな感じ。
少しでも緊張で声が震えないように試行錯誤しているつもりなんだけど……やっぱり何をしたって緊張はしてしまう。
時刻は22時。
この時間なら、さすがに棗くんも帰宅しているはず。
家で一人、ビールを飲みながらテレビを見て、リラックスしているはず。
もし外にいたら、ゆっくり喋る時間なんてない。
せっかく電話をかけても、数分で終わってしまう。
お願い、家にいて下さい!
心の中で呪文のように何度も念じながら、画面に表示させていた棗くんの電話番号を指で押した。
プルルルル…と呼び出し音が鳴り、ドキドキしていると。
意外にもすぐにその呼び出し音が途切れ、代わりに聞こえてきたのは棗くんの声だった。
「もしもし」
……棗くんの声聞くの、久し振りだ。
最初のコメントを投稿しよう!