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「棗くん…どこまで歩くの?」
花火が見えるベストスポットをキープしようと沢山の人で辺りは混雑していた。
多分私達もきっとこの辺りで見るのかな…なんて思いながら歩いていたけれど、棗くんの足が止まる事はなかった。
「あと少し歩ける?」
「うん、大丈夫だよ」
そしてそのまま混雑している場所を通り過ぎ、少し人が少なくなってきた辺りでやっと棗くんは足を止めた。
「この辺にしようか」
「うん!」
そこは混雑している川沿いではなく橋の上から花火が見れるらしく、既にその場にいる人達は立ちながらまだ花火が上がっていない夜空を見上げていた。
「ごめん、ここ立ち見なんだけど。大丈夫?」
「うん、むしろ立ち見の方がいいかも。川の芝生に座ったら棗くんの服汚れちゃうし」
「いや、俺の服っていうより、あんたの浴衣が汚れたらまずいだろ」
棗くんの不意打ちの笑顔が私に向けられ、しつこく鳴り響く胸をギュッと抑えた。
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