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19時10分。
棗くんとの約束の時間まではあと20分もある。
だけど絶対に遅刻はしたくないから、早めに待ち合わせ場所に向かったつもりだったのに。
……着くと、その場所には棗くんが既に立っていた。
「え…ウソ、棗くん!?」
まさかもう棗くんがいるだなんて少しも思っていなかった私は、思わず走って駆け寄ってしまった。
すると案の定、足がもつれてしまい体が一気にぐらついた。
……転ぶ!
「…………危ないから走るな、バカ」
派手に転ぶと思っていた私の小さな体は、がっしりとした腕の中に包まれていた。
「……ご…めんなさい……」
棗くんに抱き締められている、と自分の状況を悟った瞬間、棗くんはパッと惜しむ事なく私の体から手を離した。
「浴衣で走ったら危ないってわかるだろ普通」
「だって…棗くんがもういるなんて思わなかったからビックリしちゃって……」
「あんたなら、どうせ待ち合わせの時間より早く来るだろうと思ったから」
……棗くんには、私の行動なんてお見通しなんだ。
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