一生、この日を忘れない-2

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「……ごめん」 「え?何が……?」 突然棗くんが申し訳なさそうに謝ってきたから、私は面食らってしまった。 棗くんの言葉が返ってくるまでの間に、頭の中ではいろいろな妄想が駆け回っていく。 ごめんって、何だろう。 まさか、急に用事が出来たから帰らなきゃいかないとか? やっぱり好きでもない女と花火大会に行く事は出来ないとか? どうしよう、そんな事言われたら私……。 「歩くの、速かっただろ。ごめん、ついいつもの感じで歩いてた」 そう言って棗くんは私の方へと戻ってきてくれて。 私のすぐ隣に立ち、至近距離でまた一瞬目が合った。 「……行こ」 さっきまで私の前をスタスタ歩いていた棗くんが、今は私の横で歩いてくれている。 下駄で歩きづらい私の歩幅に合わせて、歩いてくれている。 「……歩くの…合わせてくれてありがとう」 私の『ありがとう』に対して、棗くんは何も答えなかった。 だけど、私にはわかるんだ。 隣の私から敢えて視線を外して歩く棗くんの、照れ隠しが。
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