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「何か今日、いつもと違うな」
「え…」
「……それ、大人っぽい」
チラリと視線を移した棗くん。
その視線の先には、浴衣姿の私がいた。
「ほ…本当?変じゃない?浴衣なんて凄い久し振りに着たんだけど…」
「変じゃない。…………似合ってる」
「………」
うわ……嬉しい。
ヤバイ。
ママと未央に褒められたときの数倍、嬉しいよその言葉。
似合ってるだなんて…私にとって最上級の言葉を好きな人からもらえるなんて思わなかったから、一瞬言葉が詰まってしまった。
「……ありがとう」
そのまま私達は、特にお互い口を開く事なく目的の場所へ歩き続けた。
会話なんてなくても、気まずさは一切感じなかった。
ただ、棗くんの隣にいられるだけで、幸せだと本気で思った。
まだ花火は始まっていないのに。
これからが本番なのに。
……歩きながら、頬が緩むのを必死に堪えた。
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