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「棗くん、おはよう!」
「おはよ。……何か、すげー久々感がハンパないんだけど」
「私も思った!やっぱ夏休み、長過ぎたなぁ今年は」
待ちに待った夏休み明け。
いつものあのバスで、棗くんと顔を合わせた。
棗くんに会うのはあの花火大会の日以来。
あれから私は棗くんに会えない寂しさを受験勉強に全てぶつけて。
毎日冬汰と一緒に図書館に通い、全神経を集中させた。
その結果、学力は相当向上したんじゃないかと思う。
勉強をすればするほど、夢に一歩ずつ近付いていけるような気がした。
「そんなに勉強頑張ってたんだ」
「うん!こんなに勉強したの、人生で初めてかもって言うくらいやったよ。ていっても、受験生なんだからもっと勉強しなくちゃいけないんだろうけど。これからが受験勉強本番かなぁ」
息抜きの時間で、何度も棗くんに電話しようって思った。
でも、棗くんの声を聞いたら一気に意識がそっちに集中してしまって勉強が疎かになってしまう恐れがあったから。
だから、電話はしなかった。
もちろん、棗くんから電話がかかってくる事は当然なかった。
「勉強するのはいいけど…それよりあんた、顔色悪くない?今日」
「……っ、そんな事…ないよ」
嘘をついてしまった。
そう、私はこの日、久々に体調が悪かった。
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