永遠に、叶う事のない願い-2

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「……棗くんは、結構わかりやすい人だと思います」 外見からちょっとクールそうに見えるけど。 でも、実家で飼っているポメラニアンの写真を嬉しそうに見せてくる棗くんは、本当に犬を可愛がっているんだと伝わってくるし。 バスの中でも眠たいときは眠たそうにするし、私がする話がわりと笑える話だと声に出して笑ってくれたりもする。 ご機嫌ななめな日は表情ですぐにわかるし、意外にも感情表現は豊かだったりする。 ちょっとした表情の変化で、棗くんの考えてる事全てがわかるようになればいいのにと思う。 ……さすがにそこまでは、わかりやすくはないけれど。 「……綾乃さんは、棗くんの事が好きなんですか?」 そう、聞かずにはいられなかった。 棗くんの事ばかり話す綾乃さんを見ていると、そう思わずにはいられなかったから。 綾乃さんは私からの質問に対して特に驚いた様子は見せず、冷静に切り返した。 「……何言ってるの?純ちゃん。私が好きなのは、大地だけに決まってるじゃない」 ……じゃあどうして、あの水族館で不意に私に見せたような、今にも泣いてしまいそうな顔をしているんだろう。
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