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「二人とも同じくらい好きだから、関さんと結婚するって決まった今でも、棗くんの事が気になるんじゃないんですか?」
「……違うわ」
「私、綾乃さんが水族館で私に言った事の意味、ずっと考えてました。綾乃さん言いましたよね?私に。何もかも捨てれるくらい、好きになれたらいいのにって。……正直、あのときはどういう意味なのかわからなかったです」
「……やめて」
だけど今なら、何となくわかる。
あのときの綾乃さんの切ない表情の意味。
何気なく呟いたあの言葉の意味。
「あれは……関さんとの今までを全て捨てれるくらい、棗くんの事を好きになれたらって意味だったんじゃないんですか?」
「……っ」
「だけど関さんの事も当然好きだから、今更棗くんの元に行く事なんて出来ない。だから…」
「やめてって言ってるのがわからないの?私が好きなのは大地だけって…!」
「だったら、棗くんの気持ちを弄ぶのはやめて下さい!」
一つ言葉を口にする度に、胸の中が熱くなっていくのがわかった。
棗くんの、綾乃さんへの想いの強さを私は知っているから。
だから、胸が熱くて焦げそうになるまで、私は必死に言葉を紡ぎ出したんだ。
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