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「何だよ」
電話に出た棗くんは、電話の相手にだいぶイライラをぶつけているような感じがした。
その様子から、多分相当親しい相手なんだろうな…なんて想像したりして。
「……は?いや、無理。今近くにいないし」
……何か、話の雲行きが怪しい様子。
勝手に話を聞くのは良くないと思い、その場から少し離れるために階段の方へ行こうとした。
すると、離れようとした私の右手を、電話中の棗くんがガッチリと掴んできて。
……私はその場から動けなくなってしまった。
「いや、だから無理だって。…は?待ってるってお前、何言って…」
「………」
この手の感触に慣れる事なんて、無理な話。
棗くんの指が、自然に私の指と絡み合う。
私は、空いた左手で高鳴る胸をギュッと抑えた。
こういう事を何気なくやってのけてしまう棗くんは、本当に……罪な人だと思う。
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